スペシャルインタビュー

つよく かしこく あたたかく 「米百俵の精神」を育む原点のひとつ。「長岡市立阪之上小学校」

「長岡」駅からほど近い今朝白エリアに立地する長岡市立阪之上(さかのうえ)小学校。 「米百俵の故事」で知られる幕末から明治の教育者・小林虎三郎が設立に関わった国漢学校をルーツに持つ、新潟県内屈指の歴史ある学校だ。

同校を訪れ、「米百俵の精神」を取り入れた教育、地域とのかかわり、学区のエリアの魅力などについて、教頭の寺井昌人先生にお話を伺った。

150年以上の歴史を持つ伝統校

長岡市立阪之上小学校
長岡市立阪之上小学校

――前身となる国漢学校として明治2年に開学してから150年以上の歴史がある阪之上小学校ですが、学校の教育方針についてお聞かせください。

寺井教頭先生:後述する「米百俵の精神」とも重なってくるのですが、「人づくり」を最も大事にしています。当校で育った子どもたちが、地域の担い手、国際社会の担い手になってくれることを願いつつ、教育を進めているのはおよそ150年変わらない伝統だと思います。

また、「真の国際人は、自らのアイデンティティをもつ」という教育視点も大切にしています。 長岡をアイデンティティの中心に置いて学びながら、世界で活躍してほしいとの思いを込めています。これは、国漢学校として開学以来、脈々と受け継がれてきた当校の伝統といえます。

「つよく かしこく あたたかく」にも影響を与えている「米百俵の精神」

玄関を通ると、米百俵のオブジェが出迎えてくれる
玄関を通ると、米百俵のオブジェが出迎えてくれる

――大切にされている「米百俵の精神」について教えてください。

寺井教頭先生:戊辰戦争後、焼け野原となった長岡藩に対し、支藩の三根山藩(現・新潟市西蒲区)から送られた救援米百俵を売却し、学校設立の資金に充てたのが「米百俵の故事」です。国漢学校開学当時から「人づくり」に力を入れています。これが当校に脈々と受け継がれている「米百俵の精神」です。

国漢学校の印が押された漢籍・国書が今も大切に所蔵され、先輩から後輩へと受け継がれている
国漢学校の印が押された漢籍・国書が今も大切に所蔵され、先輩から後輩へと受け継がれている

寺井教頭先生:国漢学校設立に関わった長岡藩大参事・小林虎三郎の「国が興るのも町が栄えるのもことごとく人にある。食えないからこそ学校を建て人材を養成するのだ」という主唱・精神を引き継いでいます。現在は「つよく かしこく あたたかく」という教育目標が掲げられていますが、根本には小林虎三郎の思想があります。

子どもたちの自主性から生まれた「スポーツ大会」

校内各地に掲げられた教育目標
校内各地に掲げられた教育目標

――最近の学校や子どもたちの様子で、特徴的なことはありましたか。

寺井教頭先生:「苦しい状況でも、知恵を出し合い、自分たちで解決していこう!」という雰囲気が、教職員の間はもちろん、子どもたちにも浸透しているのではないかと思います。

直近の例で言えば、コロナ禍における学校行事でしょうか。日々の授業だけでなく、学校行事もまた、子どもたちにとって大切な学びの場です。全国的に学校行事の開催が危ぶまれる中、校内では「なんとかして開催できないだろうか」との声が早い段階からあがっていました。残念ながら2020(令和2)年の運動会などは中止となってしまいましたが、子どもたちから「運動会にかわる行事がしたい」という声が出まして、校長先生に直談判をする、ということがありました。協議・検討を重ねた結果、運動会の代替案として「スポーツ大会」という形で実現し、感染予防に配慮した行事を、担任の先生の指導のもと、自分たちの手で作り上げていく機会になりました。

タブレット端末も活用した個別指導も行う

2001年に竣工した新校舎。丸型の体育館、広大なテラスなど、当時の教職員の意見を積極的に取り入れたつくりになっている
2001年に竣工した新校舎。丸型の体育館、広大なテラスなど、当時の教職員の意見を積極的に取り入れたつくりになっている

――近代的な校舎、丸みを帯びた体育館など、特徴的な施設が目を惹きます。

寺井教頭先生:伝統を大切にしながら「新しくて良いものをどんどん取り入れよう」ということも大切にしています。

今で言うと、タブレット端末への対応です。GIGAスクール構想の一環で、子ども一人ひとりに一台ずつ、タブレット端末が配布され、ICT教育がスタートしました。職員が自主的な勉強会を開き、自分たちの技量を高めるような活動をしています。

子どもに寄り添った授業の実施

漢籍・国書を実際に使った授業なども実施
漢籍・国書を実際に使った授業なども実施

――日々の授業はどのように取り組まれていますか。

寺井教頭先生:授業づくりに最も力を入れています。「授業で子どもたちを育てる」「教師は、子どもたちと授業から育ててもらっている」の考えのもと、教員一人ひとりが研究テーマを持ち、よりよい授業に励んでいます。

木をもちいた温かみのある校内
木をもちいた温かみのある校内

――「あたたかく」の面では、どのようなことに力を入れていらっしゃいますか。

寺井教頭先生:子ども一人ひとりの「ケア」を大切にしています。学習だけでなく、その子の発達状況、家庭環境に応じたケアの実施です。市や施設などと連携をしながら、個々の子どもにとって今何が必要なのかを個別に考える体制をとっています。

他にも、地域の見守りボランティアの皆さまにご協力いただき、子どもたちの安全面確保にご協力をいただいております。「地域の子どもたちは、地域であたたかく見守っていこう」という意識を地域の方と共有しています。

自分たちの住む地域について学ぶ「地域総合活動」

――50年来力を注いでいるという「地域総合活動」について教えてください。

寺井教頭先生:原型は昭和40年ごろに開始した活動なのですが、現在でいう「生活」「総合」にあたるものです。

大きく分けると2つあり、「悠久山活動」と「わたしたちの学校」の2本柱になります。 1〜4年生時に実施する「悠久山活動」では、近隣の悠久山(※)に行き、人やモノ、自然環境について学びます。活動を通じて、地域への親しみ、探究心を高めてもらおうという取り組みです。

※悠久山公園。広大な敷地内には散策道が整備され、豊かな自然を生かして日本庭園、小動物園のほか、プールや野球場なども整備されている。

3~6年生時には「わたしたちの学校」で阪之上小学校の歴史、伝統などを学んでいきます。 この2つの活動の集大成となるのが、毎年11月に長岡リリックホールで行われる英語劇「米百俵」です。6年生全員が参加し、全編英語で「米百俵の故事」を演じます。

英語劇「米百俵」の様子
英語劇「米百俵」の様子

――なぜ、英語で制作・上演されているのでしょうか。

寺井教頭先生:前述した「国際社会の担い手になってほしい」という学校方針とも深く関わるところなのですが、「米百俵の精神、逸話を、誰が聞いてもわかるよう世界に向けて発信しよう」ということで、第1回から一貫して全編英語で上演しているのです。長岡市教育委員会英語指導室からご支援をいただいているほか、外部から演技指導の講師の方に参加をいただくなど、学校外の皆さまとも連携して作り上げています。

――学校外、地域との関わり・連携の場でもあるのですね。

寺井教頭先生:参加する子ども全員が着物などの伝統的衣装を身につけて演技をしますが、これらはすべて市民の皆さまからの寄付です。着付け指導には長岡市内にお住まいの先生にお越しいただくなど、地域の皆さまとの交流の機会にもなっています。

また、校内にある「伝統館」には、貴重な品々が多数あります。長岡市内のお宅に大切に保管されてきたものを寄贈いただき、展示しています。

県外からも来場者が訪れる「伝統館」

「伝統館」
「伝統館」

――「米百俵の精神」をつたえる校内展示館の「伝統館」ですね。設立の経緯についてお聞かせください。

寺井教頭先生:もともと校内には「伝統教室」という部屋が設置され、さまざまな資料が展示されていました。歴史的価値のあるものが多数あり、校内だけでなく外部にも公開した方がよいのではないか、との声が当時からあったようです。2001(平成13)年の新校舎建て替えのタイミングに合わせ、「伝統館」としてリニューアルしました。

連合艦隊司令長官・山本五十六(旧制阪之上尋常小学校卒)直筆による、長岡藩の藩是「常在戦場」の書
連合艦隊司令長官・山本五十六(旧制阪之上尋常小学校卒)直筆による、長岡藩の藩是「常在戦場」の書

――観光スポットとしても人気と伺いました。

寺井教頭先生:長岡市の観光ガイドブック等にも掲載されていて、それを見て来られる県外の方も多いですね。米百俵に関係する展示品だけでなく、長岡藩歴代藩主である牧野家ゆかりの品や、山本五十六など、長岡出身の人物にまつわる品々も展示しています。

――普段、どのような方が伝統館に訪れますか。

寺井教頭先生:小中学生が最も多いのですが、大人の方、とくに歴史ファンの皆さまから多数ご来館いただいています。コロナ禍前は、全国各地から数多く訪れてくださっていました。来館者は、年間約500名ほどでしょうか。いち小学校の施設にそれだけの来館者の方がいらっしゃるというのは、珍しいと思います。また、「長岡」駅の近くに立地していることもあり、長岡に出張に来られたビジネスパーソンのご来館も多いですね。

県外からの来館者も多い
県外からの来館者も多い

――法被を着て館内を案内している子どもたちの写真がありますね。

寺井教頭先生:長岡市の他の小学校の子どもが校外学習で来校した際などは、当校の子どもたちが伝統館の案内役を務めることもあります。みんなしっかり勉強していて、私なんかより詳しい子もいますよ。

――阪之上小学校周辺地域は、「県立長岡高等学校」をはじめ多くの学校が集まっているエリアかと思います。周辺の教育環境についてお聞かせください。

寺井教頭先生:当校の周辺地域は、「長岡市の文教エリア」と呼ばれるエリアです。幼稚園から高校までがそろうほか、「長岡市立中央図書館」があります。学習塾も多く、教育機関が充実しています。また、「長岡」駅周辺には学生向けに開放された学習スペースもあり、学習環境は整っていると感じます。

駅を挟んで反対側には長岡市役所も入居する複合型公共施設「アオーレ長岡」があります。さまざまなイベントが開催されたり、展覧会や博覧会なども開催されており、文化に触れ合う機会も充実していると思います。

「長岡」駅が近い利便性の高さと自然の豊かさが魅力

「長岡」駅
「長岡」駅

――長岡市今朝白エリアの魅力をお聞かせください。

寺井教頭先生:一番の魅力は、やはり駅に近いことです。「長岡」駅は何をするにしても、どこに行くにしても、起点となる場所のひとつです。「アクロスプラザ長岡」などの商業施設も充実していますので、生活しやすいエリアだと思います。

学校からすぐ近くにある福島江には、新潟県有数の桜の名所として知られる桜並木があります。シーズンになると、提灯が設置されたり、ライトアップされたりと、風情があって大変素敵ですよ。

――教頭先生の個人的なおすすめスポットはありますか。

寺井教頭先生:栖吉川という小さな川があるのですが、良好な自然環境が残っていて珍しい生き物がたくさんいます。 「長岡」駅周辺の都市部でありながらも、静かな自然環境とアクセスできるところが魅力だと思っています。

長岡市立阪之上小学校
長岡市立阪之上小学校

長岡市立阪之上小学校

教頭 寺井昌人先生
所在地 :新潟県長岡市今朝白1丁目11番21号
電話番号:0258-32-2134
URL:https://www.kome100.ne.jp/sakanoue-es/
※この情報は2021(令和3)年9月時点のものです。