特別コラム

「新潟」駅前「万代広場」の再整備が描く、新潟市の新たな玄関口としての未来図

新潟の「陸の玄関口」である「万代広場」は、今、大規模な再整備が進行中だ。これは単なる交通の要衝としての整備に留まらず、市民の暮らし、利便性、そして地域の魅力を根本から向上させることを目指している。このコラムでは、その再整備の現状を紐解き、これから私たちの生活がどのように便利になり、豊かになっていくのか、その未来図を述べていく。

広場中央付近から駅舎方向(完成イメージ)(引用:新潟市HP)
広場中央付近から駅舎方向(完成イメージ)(引用:新潟市HP)

「新潟」駅前「万代広場」 再整備の主な出来事

時期 出来事
2024(令和6)年3月 万代広場東エリアが完成し、「新潟駅バスターミナル」として運用開始
2024(令和6)年春 CoCoLo新潟」2階「EAST SIDE」が先行オープン(3月27日)
CoCoLo新潟」がグランドオープン(4月25日)
2024(令和6)年10月末 万代広場のペデストリアンデッキ中央大屋根が完成
2024(令和6)年11月22日 駅前広場の新たな歩行者通路が利用開始
2024(令和6)年12月 伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録
2026(令和8)年3月31日 南口西地区の複合施設「アイコニックタワー新潟ステーション」完成予定
2027(令和9)年春 「新潟」駅万代広場の全面供用開始目標

 

万代広場」、変貌の序章:新潟における陸の玄関口の現在地

「新潟」駅北口側に位置する「万代広場」の再整備は、「新潟市8区の水と緑のつながり」をテーマに、広場を都心軸の起点として市民や来訪者をみなとまちへと誘う壮大なビジョンを掲げている。駅を単なる通過点ではなく、都市全体の玄関口、地域文化の発信拠点として再定義する試みだ。雪や雨の多い新潟の気候特性を踏まえ、上屋や防風壁の設置により、悪天候時でも濡れずに快適に移動できる歩行空間の確保が重視されている 。広場はイベント開催時にも歩行者動線を妨げないよう設計され、多目的な利用が想定されている。  

広場全体図(完成イメージ)(引用:新潟市HP)
広場全体図(完成イメージ)(引用:新潟市HP)

再整備は2027(令和9)年春の全面供用開始を目標に着実に進行している。2024(令和6)年3月には万代広場の東エリアが完成し、「新潟」駅高架下、南口バス乗降場と一体化して「新潟駅バスターミナル」として運用を開始した。これは駅の南北を縦貫する新たな交通拠点の誕生を意味する。

また、2024(令和6)年10月末には、中央大屋根が完成し、快適性と景観を両立させている。西エリアでは旧バスターミナルなどが撤去され、現在は歩道のタイル工事やシェルターの基礎工事が進行中だ。駅周辺では、南口西地区において地上32階建てのタワーマンションを含む複合施設「アイコニックタワー新潟ステーション」の建設が進み、2026(令和8)年3月31日の完成が予定されている。これらの動きは、「新潟」駅が交通機能だけでなく、商業機能、公共空間機能、そして都市のシンボルとしての役割を複合的に統合し、「通過点」から「滞在・交流の拠点」へと大きく転換していることを示している。新潟特有の気候への対策は、快適性だけでなく、都市の回復力向上にも寄与する戦略的な整備と言えるだろう。  

利便性向上の具体像:交通結節点としての進化

万代広場」の再整備は、交通インフラの抜本的な改善を通じて、駅の利便性を飛躍的に高め、人々の移動をよりスムーズで快適なものに変えつつある。

その中心となるのが、2024(令和6)年3月に運用を開始した「新潟駅バスターミナル」だ。この新しいバスターミナルは、「新潟」駅高架下、南口バス乗降場と一体化し、駅の南北を縦貫する新たな交通拠点となった。これにより、鉄道とバスの乗り換えが格段に便利になり、陸の玄関口としての交通結節機能が大幅に強化された。新バスターミナル内には、運行情報が分かりやすく表示される液晶モニターも設置されている。  

「新潟駅バスターミナル」俯瞰図(引用:新潟市HP)
「新潟駅バスターミナル」俯瞰図(引用:新潟市HP)

新幹線と在来線のシームレスな接続も大きな柱だ。在来線の高架化により、新幹線と特急いなほの乗り換えが同一ホームでスムーズに行えるようになったため、東北地方日本海側へのアクセス性が強化された。駅前広場では、2024(令和6)年11月22日から新たな通路が利用されるなど、歩行者動線の変更が段階的に行われている。利用者の要望に応え、雨や雪に濡れない快適な歩行空間が確保され、上屋や防風壁が設置される。東大通りの交通量減少傾向を受け、歩行者優先の空間創出も進み、移動の質向上と「にいがた2km」構想の回遊性向上に寄与する。 

暮らしを豊かに:利用者視点での変化とメリット

「新潟」駅万代広場の再整備は、駅を単なる交通の要衝から、人々の日常生活に深く寄り添い、豊かさをもたらす生活拠点へと変貌させる。

2024(令和6)年春には、「新潟」駅構内に「CoCoLo新潟」がグランドオープンし、約170店舗を擁する大型商業施設が誕生した。駅構内で日常の買い物や食事が完結できるようになり、利便性が飛躍的に向上した。広場の拡張も、人々の暮らしを豊かにする重要な要素だ。「万代広場」は旧駅舎部分にまで拡張され、現在の約2倍の広さになるとされている。緑あふれる憩いの空間として整備され、夜にはライトアップも施される予定だ。利用者の「居心地の良い空間」という要望に応える形で、リラックスできる滞在空間を提供する。吹き抜けスペース「ガタリウム」は「発信」「滞在」「交流」の拠点として、イベントや地産品販売に活用される予定だ。さらに、バリアフリー化とユニバーサルデザインの導入も進み、多様な利用者が安心して快適に過ごせるための配慮がなされている。

「CoCoLo新潟」
「CoCoLo新潟」

これらの商業施設の充実、広場の拡張、そしてバリアフリー化は、駅が単なる交通拠点ではなく、日常のニーズを満たす「生活インフラの中心」へと変貌したことを意味する。「新潟」駅が「暮らしのあらゆる側面をサポートする拠点」となることで、住民の日常生活における駅の存在感が飛躍的に増大し、生活の質が向上するだろう。  

新潟の顔としての役割:地域と観光の新たな拠点

万代広場」の再整備は、新潟を「日本海拠点都市」として位置づけ、観光振興と地域経済活性化の強力な牽引役となることが期待されている。

2024(令和6)年のバスターミナル開業と「CoCoLo新潟」グランドオープンは、駅周辺のにぎわいを増進させ、個人消費の回復にも寄与している。駅ビル内には「新潟市観光案内センター」が新設され、観光客へのおもてなし態勢が強化された。広場自体も、新潟の「川」や「潟」を表現するシェルターや「里山」イメージのステージで「新潟らしさ」を実感できるデザインが施されており、観光客にとって魅力的なフォトスポットや滞在空間となることが期待される。

「新潟市観光案内センター」(引用:新潟市HP)
「新潟市観光案内センター」(引用:新潟市HP)

「新潟」駅周辺の再整備は、駅と万代・万代島・古町を結ぶ都心エリア「にいがた2km」構想の中核を成すものだ。この構想は、南北市街地の一体化を図り、にぎわい空間を創出することで、「日本海拠点都市にいがた」としてふさわしい都市機能の強化を目指している。交通結節点の強化、駅機能の向上、地価の上昇など、多岐にわたる経済波及効果が期待されている。

2024(令和6)年の「佐渡金山」の世界遺産登録や伝統的酒造りのユネスコ無形文化遺産登録と相まって、「新潟」駅はこれらの観光需要の玄関口としての役割を一層強化する。駅は「ゲートウェイ」だけでなく「ミニ観光地」「ハブ」として機能し、MaaS活用で回遊性を高め、都市ブランド再構築と国際競争力強化に繋がるものと考えられる。

美しく再整備された「新潟」駅南口側(引用:新潟市HP)
美しく再整備された「新潟」駅南口側(引用:新潟市HP)

未来へつながる「新潟」駅、新たな都市の鼓動

「新潟」駅万代広場の再整備は、都市全体の未来を形作る壮大なプロジェクトだ。交通結節点機能が飛躍的に向上し、駅はよりスムーズで快適な移動を可能にする拠点へと進化した。商業機能の充実や広場の拡張は、駅を人々の日常生活に深く根ざした「生活の中心」へと昇華させている。この変革は、地域住民の利便性向上と生活の質を高め、観光客へのおもてなしを強化し、地域経済活性化、ひいては新潟の都市ブランド向上に大きく貢献している。

2027(令和9)年春の全面供用開始に向けて、「新潟」駅は日々その姿を変え、新たな都市の鼓動を刻んでいる。新潟が「日本海拠点都市」としてさらなる発展を遂げ、多くの人々にとって魅力的な「帰りたい場所」「滞在したい場所」となることを強く予感させる、そんな再整備といえるだろう。