話題の専門店とSOHOが融合した女池エリアの複合施設「NEST MEIKE SHINMEI」

新潟市中央区にある「NEST MEIKE SHINMEI」は、「人が集まり、繋がり、笑顔や感動を共有できる空間」をコンセプトに2021(令和3)年にオープンした複合施設だ。もともとはヤマト運輸の配送拠点だったところを開放的なオープンエアー設計とカヌレなど話題の専門店の入居、「SOHO(※)」事業者が集まる複合施設として生まれ変わらせた。新潟県十日町市の魚沼杉を取り入れるなど、自然とうまく調和した設計も好評。まちの景観向上にも貢献し、若い世代や子育て世代を中心に賑わいを見せている注目の施設だ。

今回は共同代表の山口さんに、施設の成り立ちからエリアの印象についてお話を伺った。

※「SOHO」=Small Office/Home Office。小規模オフィスや自宅を主な事業所とするワークスタイル

「人が集まり、繋がり、笑顔や感動を共有できる空間」

「NEST MEIKE SHINMEI」
「NEST MEIKE SHINMEI」

――「NEST MEIKE SHINMEI」は「人が集まり、繋がり、笑顔や感動を共有できる空間」をコンセプトに、当時のコロナ禍であった状況への打開策として立ち上げられたと聞いております。当時の背景や、施設の概要について、お伺いできますでしょうか。

山口さん:コロナ禍からある程度時間が経ち、その当時の記憶が薄れつつあるかもしれませんが、当時、私たちが直面していたのは「県境を越えての移動制限」や「外出自粛」など、かなり厳しい状況でした。外に出て公園で遊ぶことさえ躊躇われるほどで、「お出かけが全然できない」という感覚が広がっていたように思います。郊外の大型商業施設でさえも、お客さんの数はずっと少なくなっていました。そんな中で、みんながストレスを感じていたように思います。

当時ちょうど、女池エリアで複合施設を作るというプロジェクトが立ち上がっていたときで、「むしろ今のこの状況に合っている」と思ったんです。

建築設計事務所や施工会社も入居。自分たちで設計施工もおこなう。
建築設計事務所や施工会社も入居。自分たちで設計施工もおこなう。

――「NEST」という施設名の由来について教えていただけますか。

山口さん:コロナ禍の影響で「人との接触時間を短くする」必要がある中、「NEST」は、美味しいものが集まる場所であり、訪れる人々が一時的に集まり、またそれぞれの場所へと帰っていくことを想定しています。これは、まるで「鳥の巣」のように、集いそして育っていく場所だなと思ったんですね。そういった願いを込め「NEST(日本語で「巣」の意味)」と名付けました。

新潟発カヌレ専門店「canelé de CHIANTI」。日本橋コレド室町2などにも出店する。
新潟発カヌレ専門店「canelé de CHIANTI」。日本橋コレド室町2などにも出店する。

山口さん:入居している店舗や企業は、多くがいわゆるベンチャーやSOHOというスタイルの事業者で、初めて店を持つオーナーたちです。彼らは新しいサービスを提供したいという情熱を持って集まっています。例えば、「Days Coffee Roaster」の白井君は既に2店舗目をオープンしており、カヌレ専門店「canelé de CHIANTI」に関しても、日本橋や六本木ヒルズへの出店に加えて、名古屋駅直結の大名古屋ビルヂングにも新店舗をオープン(4/24)。これらの店舗はまるで小さな鳥が育つように、ひとつひとつ成長していっていると言えます。

正面入口から
正面入口から

――明るく、とても開放的な雰囲気も印象的ですね。

山口さん:オープンにあたって「仕切りを作らない」というのは意識していました。普通だったら玄関扉をつけるんですけど、あえてそうせずに、当初から「オープンエアな空間にしよう」って設計しました。オープンで入りやすくし、気軽に来てもらって楽しんで帰ってもらえればいいよねと。「コロナの中であってもいかに安全に楽しんでもらえるか」を意識して、施設の設計をしていた記憶がありますね。

様々な専門店が入居

「Days Coffee Roaster」
「Days Coffee Roaster」

――道路側にはコーヒー店、カヌレ専門店など、魅力的なテナントがそろっています。オーナーさん同士も仲がいいように見受けられます。

山口さん:オープン時は、カヌレ専門店「canelé de CHIANTI」、コーヒー専門店「Days Coffee Roaster」、ジェラート店「ハナタバ」の3店舗でスタートしました。それぞれのお店自体に魅力があると思いますが、店舗に親和性があると思っています。コーヒーとカヌレ、ジェラートとカヌレ、ジェラートとコーヒーなど。入居している店舗のオーナーさんも、「自分の店舗と他店舗、そしてお客様をクロスオーバーできる」という点に共感してくれたという感じでしょうか。

農家の息子がつくるジェラートの店 「ハナタバ」
農家の息子がつくるジェラートの店 「ハナタバ」

山口さん:また、コロナ禍の当時、甘いものを中心に、「自分へのご褒美」「家で楽しめるもの」などのキーワードがテレビなどで繰り返されていました。それもあって、当初はテイクアウト専門店オンリーでスタートしたんです。

場所がなければ、つくる

――「新潟」駅などの中心地からは少し離れた、住宅街である女池エリアに拠点を構えた理由はあるのでしょうか。

山口さん:新潟に住んでいると「新潟にはあまり遊ぶ場所がない」という声がよく聞かれます。私自身も新潟を離れて県外に出た経験があるので、人々が地元を離れる気持ちはよくわかります。地元に魅力的な遊び場がなければ、人々はその町に留まりたがらないんです。だから、「集う場所」や「遊びに行く場所」、「デートでちょっと立ち寄れるイケてる場所が欲しい」と思っている人々に対して、自分でそのような場所を作ることにしました。

写真左から石田伸一建築事務所代表・石田伸一氏、「サルキジーヌ」代表・大福匠氏、「海の上のライオン」代表・山口順平氏
写真左から石田伸一建築事務所代表・石田伸一氏、「サルキジーヌ」代表・大福匠氏、「海の上のライオン」代表・山口順平氏

――「女池エリア」は、新潟市の大動脈のひとつである新新バイパスの「女池I.C.」に近く、交通の便が良いことも魅力だと思います。その影響はありますか。

山口さん:複合商業施設をオープンするにあたって優位性のひとつだと思ったのが「女池I.C.」に近いということでしたね。やはり新潟は車社会なので、当然車でお越しになる方が多いですよね。実際、「NEST」に関しては8割くらい、自家用車でのご来店だと思います。そうすると、駐車場の存在が重要になってくると。

女池I.C.も近い、女池上山エリアの街並み
女池I.C.も近い、女池上山エリアの街並み

山口さん:インターが近いことのメリットについては、郊外から新潟市内へ用事がある方々、例えば近隣の新発田市や西蒲区などから来る方たちが、万代エリアや「新潟」駅前での買い物のついでに、帰りに立ち寄ってくれることが多いですね。このような動線を取り入れることで、「インターの近くにある」ということが大きなメリットとなっています。

さらに、県外ナンバーの車を見かけることが珍しくありません。高速道路の「新潟中央I.C.」も近いですから、県内だけでなく県外からもお客様が来店してくださっているのは、女池と新潟中央の両I.C.に近いことも影響しているのかもしれません。

以前あった施設のストーリーも継承したリノベーション

――「NEST MEIKE SHINMEI」は元々、運送業者さんの倉庫だったとか。

山口さん:元々はクロネコヤマトさんの倉庫でした。その後、私の先輩でもある中古車販売業者さんが入居していました。その会社が移転することになり、「何かやってみないか」とお声がけいただいたことがそもそもNESTをつくったきっかけなんです。

入居前の様子
入居前の様子

――言われてみれば、倉庫の雰囲気が残っているような気もします。

山口さん:床にあるラインの跡なども、あえて消さずに残していたり。単にリノベーションしたと言うよりは、運送業者や中古車屋の倉庫だったという「その空気感やオーラを継承したい」と思ったんです。ヤマトさんが使用していた時のコーポレートスローガン「みんなで届ける」も良いよねと。配送って、リレーのようなものじゃないですか。受付が荷物を受けて、どんどんリレーしていくっていう。このスローガンを、新しくつくるNESTにも適用しようと思ったんです。たとえばコーヒーは、農家さんが作った作物である豆を使ってコーヒーにします。同様に、ジェラートであれば、農家さんが育てたフルーツをジェラートとしてお客様に届ける、というリレーなわけです。そこから「美味しいものをみんなで届ける」という、新たなコンセプトとして生かすことにしました。

改修前の風景。NESTの誕生で景観が一変。
改修前の風景。NESTの誕生で景観が一変。

明るく、多世代が楽しめる街に変化した女池エリア

――「NEST MEIKE SHINMEI」ができる前と後で、エリア周辺の様子に何か変化はありましたか。また、神明エリアの地域住民の皆様からの評価はいかがでしょうか。

山口さん:地域の方からは「おしゃれな若者や、家族連れが訪れるようになった」という声をいただくことが多いですね。若い世代や子育て世代のファミリーがテラスでジェラートを楽しんだり、コーヒーを飲んだりしている光景が日常的にみられ、自治会から「街が明るくなった」と言われたことがあります。

正直なことをいうと、最初にこの場所を選んだとき、「街を盛り上げよう!」「街を変えてやろう」という強い意志はありませんでした。あくまでも「コーヒーやジェラートなどの異なる要素がクロスオーバーして面白いことができればいいな」という程度でした。

ですが、地域の方々から「明るくなった」「景色が変わった」と言われたのは嬉しかったですね。もし私たちにそういう力があるのなら、もっと力を入れて、街を明るくしていけたらと思っています。

「NEST MEIKE SHINMEI」
「NEST MEIKE SHINMEI」

――「NEST MEIKE SHINMEI」内で特に推したいポイントがあれば、教えてください。

山口さん:どのお店もおすすめなのですが、「人と人とが混ざり合って生まれるシナジー効果」のようなものは感じ取ってもらえるかもしれません。ジェラートを買いに行ったら「隣のコーヒー屋めっちゃ美味しいですよ!」という会話が自然と生まれたり。近所にある商店街みたいな雰囲気になっているのは魅力なのではないかと思います。

――今後チャレンジしたいことや、何か動き出している「NEST MEIKE SHINMEI」のようなプロジェクトがあればお聞かせください。

山口さん:NESTに続き、すぐ近くに2店舗目の「NEST2」を開設しました。「NEST2」では、飲食店を中心に、もっと日常的に使える美味しいお惣菜屋さんや、新潟でここにしかない鰹ラーメンを提供するラーメン屋「鰹そば 田ヶ久保」さんも入居しています。NESTとも合わせて、地域に新たな魅力をもたらすことができるのではないかと思っています。

「NEST2」
「NEST2」

――最後に、これから新潟女池周辺のエリアにお住まいになられる方々へメッセージをお願いします。

山口さん:この地域は、子育て世代も多く、安心して暮らせる環境が整っていると感じます。良識を持った人たちも多く、「いい街を作っていこう」という意識が強いですね。ミドル世代も多く住んでおり、地価も適切な水準に保たれているため、ある程度、土地自体が住む人を選んでいるという側面もあります。

地域の小学校についても、いじめが少ないと聞いています。小学生の子どもを持つ親としては、地域の小学校が新しい教育にチャレンジする機運も感じます。教員も経験豊かでしっかりとした方々がついているので、教育環境にも安心感があると思いますね。また、女池エリアは地理的にもアクセスが良く、新潟市内外の様々な場所へ行きやすいのが、私がこのエリアが大好きな理由のひとつです。

皆さんもぜひこの素敵な街に住んでみてください。そして、NESTにも遊びに来てください!

写真左から石田伸一建築事務所代表・石田伸一氏、「サルキジーヌ」代表・大福匠氏、「海の上のライオン」代表・山口順平氏
写真左から石田伸一建築事務所代表・石田伸一氏、「サルキジーヌ」代表・大福匠氏、「海の上のライオン」代表・山口順平氏

NEST MEIKE SHINMEI

共同代表 石田伸一建築事務所代表・石田伸一氏、「サルキジーヌ」代表・大福匠氏、「海の上のライオン」代表・山口順平氏(写真左から順に)
所在地:新潟県新潟市中央区女池神明3-14-4
URL:https://nest.news/
※この情報は2024(令和6)年4月時点のものです。